古都に舞う一陣の風 / Neilpryde BAYAMO
直線を基調とした美しいアウトラインが、戦闘機然とした迫力を醸し出すニューバイヤモ。
目を引くギミックや派手さを追う事無く、シンプルに使い易く構成されたフレームがアスリートの能力を引き出す。シンプルであるが故に、本気プロダクトならではの機能美が引き立つ好例といった感じですね!ちゅーわけで、今回はフルモデルチェンジとなった新作フレームにシマノDi2とエドコのカーボンウィールを合わせ、さらにはパイオニアのおにぎりまで入れちゃった全部入りを組んだのでご紹介!
ニールプライドのTT/トライアスロンウエポン「バイヤモ」
名前の由来になったのはキューバの都市「バイヤモ」に吹く風。
ミルキーブルーと言われる強烈に綺麗な海、そして風と波に恵まれキューバですが、情勢変化に伴い2015年に国交が回復するまでは「社会主義国最大の敵アメリカの文化」と見なされていた「サーフィン」は現地では全く普及していなかったそうです。しかし、だからこそアングラ・カルチャーとしてのマリンスポーツを楽しめる最後の楽園としてキューバは世界中から注目を集めているんですね。わざわざこの名前をTTマシンにつけるあたりに、ニールプライドのルーツであるマリンスポーツへの愛とリスペクトを感じます。
さて余談ですが、チェ・ゲバラやフィデル・カストロによる革命で有名な国キューバにおいて、バヤモは首都ではありませんが特別な場所のようで、キューバ国歌にも登場します。
La Bayamesa(バイヤモの歌)と、題名の「ラ・バイヤメーズ」でわかるように、フランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」を手本に作曲された革命(スペイン植民地支配からの独立)の歌が国歌になってるんですね。そのおかげか、少々攻撃的かつ勢いのついた歌詞が特徴です。が、最後の「武器を取れ!勇敢なる者たちよ、急げ!」この部分なんかは、革命戦争をレース競技に置き換えたらピースフルかつテンションが上がってイイ感じだと思うのは部外者だからでしょうね。当然、武器ってのは銃ではなくニールプライドのバイヤモでね。
フレームの特徴は↑の動画をチェック!
前モデル「バイヤモ リミテッド」とは大きくイメージを変更しながらも、変わらない懐の広さが魅力
ニューバイヤモで先ず目につくのはボディシェイプの刷新。
特にシートチューブからリアトライアングルにかけての造型はトレンドを取り入れた事で全くの別物に。ボリュームの有るBB周りはそのままに、各パイプを繋げるリブは更に大型となり、踏力を受け止める剛性をアップ。またウイング状のシートステーはシートチューブ(ボード?)からサイドに張り出して横から繋がる特殊なカタチに。まっすぐに組み合わせずにサイドから繋げた事で、リアホイールのアクスルからサドルまでの間に衝撃の逃がし部位ができ、路面からの突き上げを吸収し衝撃を緩和する役目も。ボリュームアップしつつも剛性過多にはならないよう、しっかりと気を使っているみたいですね。
スタンダードなコラム式ヘッドでコントロール周りを自由にセッティング
ヘッドの構成は旧モデルから変更無くスタンダードな仕様。ムチャクチャ短いヘッドチューブに一般的なオーバーサイズコラム、ベアリングはインテグラル式。なので、サードパーティ各社から出ている様々なハンドルとDHバーの選択ができ、結果的に自由なポジショニングが可能。汎用部品での構成になるから、カスタマイズも自由自在ですね。ほんでヘッドチューブが短いので、小さいサイズのフレームでも下ハンを低ーい位置にセットして落差を出したり、逆にコラムスペーサーで位置を上げて長距離レースに対応したりと、何でもOK。正直やりたい放題です。
今回は下ハンとTTバーのセット「3T・VOLA PRO」に、「PROFILEDESIGN・J2 BracketKit」を追加してアームレスト取り付け位置を変更して幅をメッチャ広げました。TTだと狭くセットして頭を隠す様な空力重視のポジションが一般的ですが、今回は長時間のエアロタックポジションでも肺が圧迫されないようにとの判断から、身体への負担軽減を重視した結果です。
あと、DHバーの径は汎用品はだいたいどこも一緒なので、バー自体とか部品は流用が効くのがうれしいですね。このへんもオススメのポイントです。
DHバーを含めたTTハンドル構成のバイクには電動シフターが◎
変速関係はシマノの「アルテグラDi2 6870」をフルセットで投入。
「ST6871 TTレバー」&「SW-R671 バーエンド変速スイッチ」を軸に、「新型シートポスト内蔵バッテリー」「ワイアレスユニット」などで、一定速度での巡航で真価を発揮するシンクロシフトシステムや、サイコンへのギア表示、無線でのDi2コントロールにも対応させました。
電動変速機はDHバーを含めたTTハンドル構成の時にこそ、その真価を発揮します。
・レバーでの引きの微調整も、力をかける必要も無し。ボタンを押すだけで正確にチェンジ。
・機械式は変速時にTTバー先端へ手を動かす必要が有ったが、電動はスイッチが付けばどこでも変速操作可。
・したっけ、ブレーキングや深いコーナーなどで下ハンを握ったままでも変速可。
・てか、シンクロシフトなら、余計な事は考えずに変速は右のボタンだけ操作してればOK。
ってな感じで、結果として変速ストレスを解消し、その分のエネルギーと集中力をペダリングとマシンコントロールに集中できるって訳です。レースがキツければキツいほどその特徴が効いてくるでしょうね。
あと、ギア比は53-39 × 11-32Tと、かなーりワイドな設定にしたため、RDはロングケージに。これはアップダウンが多く、距離も長いトライアスロン大会を主眼に置くオーナーさんが、何としてでもランへ脚を残す為にと採用。クランク側は一度にチェーンにかかる歯数を多く踏力を効率良く伝える53-39Tを、カセット側は重ーい11Tからきっつい登りで「頑張らない事で脚を温存する」ための32Tをと、美味しいとこ取りな内容になってマス。
ブレーキは、コントローラブルかつ効くダイレクトマウント
前後ブレーキはダイレクトマウントタイプ。フロントはフォーク前方、リアはBB下に配置。
尚、リアブレーキは「シマノ」だとアウターワイヤー受けの位置の問題で、パイオニアやステージスなどの一部パワーメーターユニットに干渉してしまいますが、「TRP/T851」や「FSA/エアロダイレクト」などを使用する事で前述のユニット干渉問題を解決出来ます。今回はTRPのT851をインストールしましたが、アルテグラダイレクトから交換しても全く違和感の無い、高いコントロール性とストッピングパワーを発揮しました。正直TRPは不安に感じる方も居ると思いますが・・・T851は大丈夫です。
スイスの老舗ホイールブランド「エドコ」のレースウィールで巡航スピードアップを狙いつつ疲労の蓄積はダウン
100年を超える歴史を持つ、ヨーロピアン・パーツマニュファクチャラー「エドコ」。現在はインダストリアルデザインで有名なオランダの「TSGグループ」に属した事で、本社機能とホイール組みをするファクトリーはオランダに移ったものの、ハブボディ自体は変わらずにスイス工場にて切削が行われている。超シンプルな構造で軽量かつ高剛性なオリジナルハブの設計と、それを実現する高いアルミ切削技術、そして組み上げ精度の良さで世界的に評価が高い。
今回のチョイスは46mmハイトの軽量カーボンクリンチャーリムで、登りから巡航までオールラウンドに使える「アンブリアル」のナローモデル。現行型はワイドなエアロリムになりましたが、ナロータイプにも様々なメリットが有ります。先ず23Cタイヤに最適化されたリム幅ならフレームのクリアランスを気にする事も少ないですし、なにより外周が軽いので踏み感は軽快そのもの。実際に前後セットで1425gと軽量で、高い空力特性を持ちながら登りでも足枷になりません。なによりシャープな見た目も好印象ですね。
ちなみにこのリムですが、TSG GROUPの3Dリムドリルマシンを使用して、ハブからのスポーク進入角度とスポーク径をもとに、完全にマッチしたジャストな穴開けがおこなわれています。これにより、スポークホールを最小限のサイズで開ける事ができ、リム内側のエッジに余計な凹凸を作らない事で乱気流を抑制している他、スポークホールのエッジがスポークの側面に当たった状態でテンションをかけた事で起こる不要な「支点」の追加と、そこに発生してしまうストレスから来るスポークの不可思議な折れ、また状況によるスポークテンションの大きな増減も抑制する効果があります。※edcoのカーボンリムは全てこのマシンで穴開け加工。
現在、日本で手に入るedcoのホイールは45mmハイトのワイドエアロリムを採用した「アンブリアル」のみですが、ラインナップが増える事を願ってます。マジで良いから!!!!
ケレン味の無い構成がそのまま素直な扱いやすさに直結。自由なパーツチョイスで、用途と好みに合わせたベストセッティングができる!
てなわけで、むっちゃカッコ良くて走りもバッチリなTTマシンができました。
やっぱニールプライドは安心ですね、どのモデルもしっかりと与えられた使命に即した性能と、僕らメカニックが組みやすい仕上げの良さ(つまりは整備性が高いって事ね)、そして個性がしっかりと存在しています。何度も言っていますが、スタンダードな構成とセッティング幅の広さも言わずもがな。
バイヤモリミテッドは全日本選手権U23を制して日本一に輝きましたが、その素性の良さをしっかりと引き継いで更に伸ばした印象の有るニューバイヤモ。TT、トライアスロン問わず、その懐の深さと素直な反応で出しゃばらずにライダーの潜在能力を引き出します。
はじめてのTTマシンとしても、今乗っているバイクからの乗り換えでも問題ないでしょうね。
こ れ は い く し か ! !