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2020年2月14日

快適さが生む高次元な操作感 / ARGON18 KryptonPro

はい、というわけで今回はARGON18のエンデュランス・ロード “クリプトン” シリーズのハイエンドモデル、【クリプトン・プロ】をご紹介しましょう。マジやばいよコレ

Krypton Went to Hell

このモデル、昨年の『パリ〜ルーベ』がデビュー戦……かと思ったら早速市場に投入されました。
ニーズが無ければこれほど早くラインナップされる事は無いでしょうから、欧米でのエンデュランス・ロードの人気の高さがうかがえます。

“扱いきれない剛性”や”高すぎる想定速度レンジ”よりも、ライダーをフォローしてくれる優しさと強さ、リアルにサンデーレーサーが求めている特性が評価されているのでしょう。

さて、昨年・一昨年とASTANAのメインバイクはGalliumProでしたが、石畳のレースというストレスフルで特殊な状況のために、元より快適性に定評のあったクリプトンをモデファイ。『快適性はそのままに、ワールドツアークラスのレースに対応出来る程に、更に軽く・反応をシャープに』と、徹底的に特徴を磨き上げたことで生まれたのが、今回紹介する【KryptonPro】ってわけです。

したっけ、なんかスゴイのできました

“市場でも最も快適なフレームの1つで有りながら、速度やパフォーマンスを犠牲にしていない”  road.cc

とかね、海外のインプレサイトとかでもうメチャ評判がいいんですよこの子。
*普通と逆のプロセスで開発された経緯があるのですが、その辺に秘密があるのかもしれません。

*カーボン素材がメインとなった最近のバイク業界の、よくある開発の順番

プロロードレース用にハイエンドロードバイクを作る
→ それを元に市販バージョンのハイエンドグレードを作る
→ 更にカーボン素材とレイアップを変更して特性を近づけつつコストダウンを図ってセカンドグレードを作る
(★ツアープロ用が先、その後アマチュアレースに最適化した市販ハイエンドを販売)

ってな流れがスタンダードなんですが、Kryptonに関しては

グランフォンド(アマチュアレース)用に市販エンデュランスロードバイクを作る
→ それを元にカーボンを軽量/高弾性なモノに変更、同時にホースの内装化等など細部の設計変更も加え、パヴェを舞台としたプロロードレースに最適化
→ それを元に市販用ハイエンドグレードを作る 
(★アマ用が先、その後プロレースに最適化して更に市販ハイエンドにフィードバック

と、変則的なパターンなんですね。元から有ったKryptonシリーズ(CS・GFの2グレード)の完成度が高かった事に加え、レース現場でのフィードバックで完成度が更にアップした感じでしょうか。

※尚、プロコンチネンタルチームがメインの時代は市販ハイエンドフレームをそのまま使っていました。(ラモーンは代理店時代、ジャパンカップに予備フレームを持って行った事があります。当時のスパイダーテックのメカ曰く「コケたら側溝にハマって折れちゃったから販売用の在庫持ってきて、大丈夫、まったく一緒だから(ワラ」ですよ。アレは焦ったよね)その後、2015年にチームがプロツアークラスになって、プロトタイプや剛性を変えた一部選手専用品などをレース現場でテストしてたかんじです。データ取得とフィードバックをスピーディに強化していった感じですね。いやあんなん金かかってしかたないっぺよ、知らんけど

M サイズフレームはこんな感じ(油圧アルテグラDi2セット+FSAクランク+Visionホイールのメーカー試乗車)。ワイヤーがフル内装でスーパースッキリなルックス、他に類を見ないセンターベンドのフォークが特徴的ですね

3Dヘッドチューブは0mmで、ステムはドン付け。それでもヘッドチューブ自体が長いため、ポジションは少々アップライトなセットに

シンプルな直線基調のアウトライン。緩いアールはほぼ無く、しなりを活かしたい場所にピンポイントで角度をつけているみたいなかんじ

構造で衝撃を逃がすらしいぞ

最近流行りの衝撃吸収部品(サスペンションや、エラストマー等の柔らかい樹脂など)ですが、Kryptonはあえて使っていません。ロードバイクの基本に忠実に、しなりを活かしてフレームで逃がす構造とする事で、部品点数の増大やメンテナンススパンの短縮を避け『軽くて乗りやすく且つ速い』をシンプルに追求しているって感じ。

元よりフレームの上下で大きく剛性バランスを別ける”HDS(ホリゾンタル・デュアル・システム)”を採用しているARGON18の設計ですが、12mmスルーアクスルによってホイール固定軸近辺の剛性が大きく上がったこのフレーム(ディスクブレーキ専用)では、さらに上部(コンフォートゾーン)が動くような設計とし、下図の赤い部分を積極的にしならせて衝撃と振動を逃がす工夫がなされている、みたいなかんじですね。

以前、設計者さんのお話しで聞いた「サスペンションや擬似サス等、動的に衝撃を吸収する部品を、動力伝達に関わる部分と被せて配置してしまうことで、必要な導線に不具合を起こしたり、逆に全体の剛性バランスが不明瞭になる。また指定するのであれば、そこに衝撃を集中させる衝撃の導線的な設計がベースに必要で、さらには前述の乗り手が作るエネルギー『踏力』の伝達にも気を使わなければいけないので単純に吸収だけすれば良いって訳でも無いし云々かんぬん」的な話を思い出しました。自転車のカタチが全く違うモノにならない理由はUCIのレギュレーションだけじゃないんですよね、実際に伝統的な技術を”素材に合わせて”最適化するなど、セオリーとシンプルに向き合うってのが最も効率が良く効果がでるんでしょうね

フォークはベンド部から下が前後に、フレームは上部全体が各方向にたわむ事で動きを逃がす。しかしながら前後のホイール軸からBB、ヘッドにかけてのパワーゾーンは必要以上に動かず、踏力と推進力をしっかりと受け止める。動き方は下の動画を見てね

その昔、1950年代のはなし。イギリスのモーターサイクルが世界一だった時代ですが、ノートンというバイクメーカーが作ったスチールパイプのダブルクレードルフレームが「フェザーベッド」なんて呼ばれていて、今でも多くのエンスーによって大事に乗られている逸品中の逸品なんですリアホイールをスイングアーム+バイク専用サスで支え、ネック部のしなりも利用して操縦性を上げた現代バイクフレームの開祖的なソレ『軽くて強くて乗り心地もハンドリングもイイ!』ってなカンジでもう大層出来が良くて、一躍大人気になったわけです。(フレーム単体があまりにも秀逸過ぎて、当時はエンジンはトライアンフの方が出来が良いからと、フェザーベッドにトラエンジンで『トライトン』とか、フェザーベッドにヴィンセントエンジンで『ノーヴィン』とか、様々なキメラが生まれるという謎の現象を引き起こしたりしました。日本製だとkawasakiのZ1/Z2あたりのフレームがフェザーベッドの系譜で有名ですね。あーもうトライトンいいな〜欲しいな〜)

まあ脱線しましたが……人間が操縦している以上、乗り物の快適さってのはそのまま速さに繋がるよ!って事ですね。そこいくとコイツはイイぞ!フェザーベッドフレームかよおい、みたいな事を言いかったんです。それだけなんスよマジで

ステムは専用だが、ハンドルクランプ部はロードとしてはスタンダードな31.8mm径なので、好きなハンドルをセットしてくれたら良いと思うんよね。写真のSTIはシマノの油圧/電動的なアルテを装備。スッキリ!

オモシロ構造の専用ステム。フレームサイズで付属するステムの長さは決まってしまう(付属ステム長 XXS/70mm XS/80mm S/90mm M/100mm)が、別売りで70mm~120mmまで用意されてたりする

よくあるフル内装システムと違い、ブレーキホースはステム内部ではなく、下側外側から途中で内部に引き込むカンジ。微妙にフル内装ではないため、ハンドルは外装タイプでも大丈夫!ってか逆に、ハンドルセンター後方に穴が開いててもそこからは通りません

ホースと電動コンポのケーブルは引込口は専用のゴムバンドでカバー。ステム構造は上部本体と下部のホースライナーの分割式みたいな?3Dヘッドは0mmUP(一番下)でこんなカンジ

3Dヘッドチューブの説明図。タダのスペーサーじゃなくて、ヘッドの上部ベアリングの位置自体を動かしてるから良いんだよって事ですね。ハンドル位置を上げてもヘッドチューブ剛性が犠牲にならんよってな

トップチューブにはBENTO-BOX用のボルト受けがあるぞ。ボトルケージとかトップチューブバッグとか、色々固定出来ます。ただ、この辺のネジは閉めすぎると受け側壊すので注意。あと、汗でサビてナメるとかやりがち。注意

ダウンチューブ上部のシフトワイヤ引込口は、形状の違う3種のフタを使い分ける事で各種コンポに対応。写真はshimano Di2用のジャンクション埋め込みタイプのフタ。機械式の場合はココからワイヤー引き込みが出来るフタも用意されてるよ

フレームセットに付属するカーボンシートポストTDS/RCL。軽量名だけでなく、クランプを前後逆につける事でセットバック量を15mm/25mmから選べるスグレモノ。径は27.2mmのスタンダードな円柱状ポストなので、必要であれば別のポストへの交換もOK

マットブラックのボディにグロスブラックのブランドロゴ。ダウンチューブは空力効率を重視した下側が突端の三角断面を採用している(カムテール

ゴツいフロントフォークは中頃でガッツリ曲がるオモシロ形状。内側にはフェンダー固定用のダボも装備

700/25Cのタイヤを装備してこんな感じ。700サイズなら最大34mm幅まで入っちゃうぞ

ホイール固定のスルーアクスルはDTスイス。ハンドルは取り外し可能でフタはARGON18ロゴ入りの専用品

シートチューブ背面にはDi2ケーブルの引込口が、下にはワイヤーを通す穴が見える。使わない方は付属のゴムキャップで塞いでおけばOK

このブラックアウトされたクランクはFSAのSL-K LIGHTスペシャルエディション。クリプトンGFのメルセデスコラボモデル”Silver47″に標準採用される特別仕様(単体販売無し

FDは電動の大本命アルテグラDi2

RDはスタビライザーを備えたグラベルコンポの先駆者アルテグラRX。RDハンガーはスタンダードとダイレクトの2種類が付属するので、シマノRシリーズのRDなら、ダイレクトドッキング軽量かつ固定部の剛性アップで変速もシャキシャキな感じですよ

クランクに加え、ホイールもブラックアウトの特別仕様”Vision/TRIMAX CARBON SPECIAL EDITION”。コレも”Silver47″にのみ標準装備のレアもの

いかにも走りそうなバックビューでしょ。シンプルな外観で軽くて速くて乗りやすいバイクが欲しいならコレでしょ

早速別サイズも見せちゃうぞ

てなわけで、ココからはSサイズ(top540mmなので、アジアメーカー表記ならMサイズくらい?)フレームにGRXのSTI+ワイドなアドベンチャーバー+ワイドリムワイドタイヤ装備の『更に快適使用』!

ブラケット上部の平らな部分が多め形状のDi2/ST-RX815なので、見た目よりもポジションは深め。全身ブラックアウトのカラーリングで、ロゴのレッドが逆に際立つ

スロープ状のトップチューブからシートステーにかけての細身のラインがいかにも乗り心地良さそうな感じ

少し深めのリムがホイールベース長めなフレーム形状にマッチしてカッコイイ。BBドロップも78mmと低重心な車体は安定感も抜群なんですよふはは

バーテープ巻く前の状態。このSTI(RX815)だけの特徴として、ブレーキレバーのヒンジ位置変更による、ブラケット上部からのレバー引き効率の向上が挙げられるのだが……コレがマジで最高なんですよ!チョー引きやすいんだってマジで

バーテープを巻いた状態。レバーが外側に傾斜しているので、引きを深くしてもシフトボタンがバーに干渉しにくいぞ

とってもワイドでテーパーな感じのENVEアドベンチャー的ハンドルさん。軽いぞ!広いぞ!

バーエンド部にはDi2のジャンクションとBluetoothユニットをぶっ込んだのでスーパースッキリな見た目。※BTユニットを外に出した方が整備性は良いので注意

ジャンクションをバーエンドに内蔵したので、ダウンチューブの開口部はフタしちゃおうね〜。スッキリですね

ブレーキホースとDi2ケーブルはステム下に引き込み。このくらいホースの余裕を残しておけば、カット無しでステムを上下に20mmずつ位は動かせる、ハズ

名作6800アルテクランクとFDさん。性能面は折り紙付き!の動きの良さ

やっぱりダイレクトマウントですよね、のRDはアルテR80のロングケージ

ブレーキキャリパーはGRX。ディスクにもパッドには放熱フィンの付いたアイステクノロジー的なヤツを使って放熱バッチリ。下り坂でバンバンブレーキかけても安心仕様

BBは当然のことながら「フレームにも安心・ベアリング交換できて安全・アルミブロックのボディが高剛性で、整備性も良好かつ回転効率もイイに決まってんじゃん」なWISHBONEを装着。チェーンガードはフレームに付属する純正品で更に安心

ENVEのスーパーワイドリムカーボンホイールARさん。どれくらいワイドかっていうと700/28Cのタイヤで空気入れてもリムの方がワイドという幅広過ぎ仕様

まだまだ余裕のクリアランス(700/28C)

とまあ、いい感じでしょ!

できた!

お散歩からブルベ、ロードレースまで何でも快適にカッ飛んでイケちゃう万能選手が完成

実際乗ってみても、軽くて素直でハンドリングもマイルドと、疲れにくい要素満載。
「シャープ過ぎるロードに疲れちゃった、けど砂利道走る事はほぼ無いからグラベルまで行っちゃうとやり過ぎだし……」なんて方、チョーオススメです。

エンデュランスロードとか遅そう……なんて考えてる方、その考えは古い
とりあえずKryptonシリーズに乗ったらわかるんだな〜マジで。