快適さが生む高次元な操作感 / ARGON18 KryptonPro
はい、というわけで今回はARGON18のエンデュランス・ロード “クリプトン” シリーズのハイエンドモデル、【クリプトン・プロ】をご紹介しましょう。マジやばいよコレ
このモデル、昨年の『パリ〜ルーベ』がデビュー戦……かと思ったら早速市場に投入されました。
ニーズが無ければこれほど早くラインナップされる事は無いでしょうから、欧米でのエンデュランス・ロードの人気の高さがうかがえます。
“扱いきれない剛性”や”高すぎる想定速度レンジ”よりも、ライダーをフォローしてくれる優しさと強さ、リアルにサンデーレーサーが求めている特性が評価されているのでしょう。
さて、昨年・一昨年とASTANAのメインバイクはGalliumProでしたが、石畳のレースというストレスフルで特殊な状況のために、元より快適性に定評のあったクリプトンをモデファイ。『快適性はそのままに、ワールドツアークラスのレースに対応出来る程に、更に軽く・反応をシャープに』と、徹底的に特徴を磨き上げたことで生まれたのが、今回紹介する【KryptonPro】ってわけです。
したっけ、なんかスゴイのできました!
“市場でも最も快適なフレームの1つで有りながら、速度やパフォーマンスを犠牲にしていない” road.cc
とかね、海外のインプレサイトとかでもうメチャ評判がいいんですよこの子。
*普通と逆のプロセスで開発された経緯があるのですが、その辺に秘密があるのかもしれません。
*カーボン素材がメインとなった最近のバイク業界の、よくある開発の順番
・プロロードレース用にハイエンドロードバイクを作る
→ それを元に市販バージョンのハイエンドグレードを作る
→ 更にカーボン素材とレイアップを変更して特性を近づけつつコストダウンを図ってセカンドグレードを作る
(★ツアープロ用が先、その後アマチュアレースに最適化した市販ハイエンドを販売)
ってな流れがスタンダードなんですが、Kryptonに関しては
・グランフォンド(アマチュアレース)用に市販エンデュランスロードバイクを作る →
→ それを元にカーボンを軽量/高弾性なモノに変更、同時にホースの内装化等など細部の設計変更も加え、パヴェを舞台としたプロロードレースに最適化
→ それを元に市販用ハイエンドグレードを作る
(★アマ用が先、その後プロレースに最適化して更に市販ハイエンドにフィードバック)
と、変則的なパターンなんですね。元から有ったKryptonシリーズ(CS・GFの2グレード)の完成度が高かった事に加え、レース現場でのフィードバックで完成度が更にアップした感じでしょうか。
※尚、プロコンチネンタルチームがメインの時代は市販ハイエンドフレームをそのまま使っていました。(ラモーンは代理店時代、ジャパンカップに予備フレームを持って行った事があります。当時のスパイダーテックのメカ曰く「コケたら側溝にハマって折れちゃったから販売用の在庫持ってきて、大丈夫、まったく一緒だから(ワラ」ですよ。アレは焦ったよね)その後、2015年にチームがプロツアークラスになって、プロトタイプや剛性を変えた一部選手専用品などをレース現場でテストしてたかんじです。データ取得とフィードバックをスピーディに強化していった感じですね。いやあんなん金かかってしかたないっぺよ、知らんけど
構造で衝撃を逃がすらしいぞ
最近流行りの衝撃吸収部品(サスペンションや、エラストマー等の柔らかい樹脂など)ですが、Kryptonはあえて使っていません。ロードバイクの基本に忠実に、しなりを活かしてフレームで逃がす構造とする事で、部品点数の増大やメンテナンススパンの短縮を避け『軽くて乗りやすく且つ速い』をシンプルに追求しているって感じ。
元よりフレームの上下で大きく剛性バランスを別ける”HDS(ホリゾンタル・デュアル・システム)”を採用しているARGON18の設計ですが、12mmスルーアクスルによってホイール固定軸近辺の剛性が大きく上がったこのフレーム(ディスクブレーキ専用)では、さらに上部(コンフォートゾーン)が動くような設計とし、下図の赤い部分を積極的にしならせて衝撃と振動を逃がす工夫がなされている、みたいなかんじですね。
以前、設計者さんのお話しで聞いた「サスペンションや擬似サス等、動的に衝撃を吸収する部品を、動力伝達に関わる部分と被せて配置してしまうことで、必要な導線に不具合を起こしたり、逆に全体の剛性バランスが不明瞭になる。また指定するのであれば、そこに衝撃を集中させる衝撃の導線的な設計がベースに必要で、さらには前述の乗り手が作るエネルギー『踏力』の伝達にも気を使わなければいけないので単純に吸収だけすれば良いって訳でも無いし云々かんぬん」的な話を思い出しました。自転車のカタチが全く違うモノにならない理由はUCIのレギュレーションだけじゃないんですよね、実際に伝統的な技術を”素材に合わせて”最適化するなど、セオリーとシンプルに向き合うってのが最も効率が良く効果がでるんでしょうね
その昔、1950年代のはなし。イギリスのモーターサイクルが世界一だった時代ですが、ノートンというバイクメーカーが作ったスチールパイプのダブルクレードルフレームが「フェザーベッド」なんて呼ばれていて、今でも多くのエンスーによって大事に乗られている逸品中の逸品なんです。リアホイールをスイングアーム+バイク専用サスで支え、ネック部のしなりも利用して操縦性を上げた現代バイクフレームの開祖的なソレは『軽くて強くて乗り心地もハンドリングもイイ!』ってなカンジでもう大層出来が良くて、一躍大人気になったわけです。(フレーム単体があまりにも秀逸過ぎて、当時はエンジンはトライアンフの方が出来が良いからと、フェザーベッドにトラエンジンで『トライトン』とか、フェザーベッドにヴィンセントエンジンで『ノーヴィン』とか、様々なキメラが生まれるという謎の現象を引き起こしたりしました。日本製だとkawasakiのZ1/Z2あたりのフレームがフェザーベッドの系譜で有名ですね。あーもうトライトンいいな〜欲しいな〜)
まあ脱線しましたが……人間が操縦している以上、乗り物の快適さってのはそのまま速さに繋がるよ!って事ですね。そこいくとコイツはイイぞ!フェザーベッドフレームかよおい、みたいな事を言いかったんです。それだけなんスよマジで
早速別サイズも見せちゃうぞ
てなわけで、ココからはSサイズ(top540mmなので、アジアメーカー表記ならMサイズくらい?)フレームにGRXのSTI+ワイドなアドベンチャーバー+ワイドリムワイドタイヤ装備の『更に快適使用』!
とまあ、いい感じでしょ!
実際乗ってみても、軽くて素直でハンドリングもマイルドと、疲れにくい要素満載。
「シャープ過ぎるロードに疲れちゃった、けど砂利道走る事はほぼ無いからグラベルまで行っちゃうとやり過ぎだし……」なんて方、チョーオススメです。
エンデュランスロードとか遅そう……なんて考えてる方、その考えは古い。
とりあえずKryptonシリーズに乗ったらわかるんだな〜マジで。